海外から学ぶ在宅医療~アメリカ編~

海外から学ぶ在宅医療~アメリカ編~

海外から学ぶ在宅医療~アメリカ編~

今回は海外から学ぶ在宅医療、第2弾アメリカ編をご紹介します。アメリカでは国が社会保障に介入する事が少なく、公的なサポートがあまり十分ではありません。「救急車を呼ぶにもお金がかかる。」という事が広く知られていることからも、日本とは医療制度が大きく異なっているというイメージは多くの方々がお持ちの事と思います。では、具体的にはどのような医療体制になっているのでしょうか。

アメリカの公的医療保険制度

アメリカの基本的な考え方は「自己責任」です。社会保障面でも、その考え方は色濃く出ており政府の介入は少なくなっています。公的な医療保険については、高齢者と障害者を対象とした「メディケア」と、低所得者を対象とした「メディケイド」の2種類のみとなっています。先進国で唯一国民皆保険制度が導入されておらず、無保険者を抱えるアメリカですが、オバマケア(オバマ政権下で保険料の支払いが困難な低所得者に補助金を支給することで、国民の9割以上が公的医療保険に加入することを目指した医療保険制度改革)によって無保険者が大きく減少しました。しかし、その一方でトランプ政権に移行後、オバマケアを撤廃する動きがあり、社会保障制度が今後変化する可能性もあります。メディケアは政府が運営をしており、加入者数は5680万人、メディケイドは政府のガイドラインに基づいて、州が運営しており、内容は州ごとに異なっています。メディケアが短期の医療ケアを対象としているのに対し、メディケイドは、長期の介護ケアも給付の対象となっているのが特徴です。

アメリカの公的介護保険制度

アメリカには公的な介護保険制度は現状ありません。メディケアの範囲内でのみ公的支援を受けられるという仕組みになっています。日本では介護保険の範囲内のサービスとして当たり前に利用されている、配食サービス、入浴介助といったサービスはアメリカでは全て自己負担のサービスとなっています。では、メディケアとメディケイドのどちらでもカバーできない場合、支払いができない方々は何のサービスも受けられないのでしょうか。実は、一概にそういう訳ではありません。このような場合、「アメリカ高齢者法」によって、費用面での補助を受けられる仕組みとなっています。しかし、メディケアとメディケイドに比べると予算が少ない点と、州ごとに運用状況が異なる為、十分なサポートは期待ができないのが現状です。
このように、公的保険制度が充実しておらず、有償サービスでは経済的な負担が大きくなってしまう為、家族やボランティアなどから無償のケア(インフォーマルケア)を在宅で受けることが主流となっています。また、65歳以上の高齢者のメディケア加入者の59%が民間の保険にも加入し、メディケアで補いきれない部分を補填しています。

アメリカの在宅ケア

それでは、アメリカの在宅ケアはどのような仕組みになっているのでしょうか。まず大きな特徴として挙げられるのは、民間事業者がサービスの中心となっている点です。訪問介護(家事の支援)、配食サービスなどの医療に該当しないケアのほか、デイケアや、看護師などが専門的な医療ケア行う在宅看護、ホスピス・緩和ケアなど提供されています。このように公的サービスが十分でないアメリカでは、医療サービスの選択が経済的な事情によるところが大きく、必然的に施設ケアよりも在宅ケアを受ける高齢者が多くなっています。また、在宅ケアの特徴として、在宅ケアの主な担い手は、配偶者などの家族やボランティアで、地域に住む高齢者が受ける介護のうち、インフォーマルケアが占める割合は9割以上といわれています。経済的な負担が大きいため、民間事業者による有償ケアが受けられず、やむを得ず家族にお願いするというケースが多いと言われています。
家族介護者を支援する取り組み
このように、家族介護者の負担が非常に大きくなってしまっているアメリカでは、負担軽減のための取り組みが行われています。
◆PACE
“Program of All-inclusive Care for the Elderly”(高齢者の為の包括的ケアプログラム)の略称。 在宅ケアが困難で、施設への入所を州政府が認めた要介護者を、認められた後も自宅で生活し続けられるように、地域で包括的にサポートするプログラムの事。
参加資格は、1.55歳以上であること、2.州政府が施設への入所を認めている事、3.PACEのサービス提供圏内に居住している事、4.PACEへの参加が本人または第三者の健康や安全を脅かさない事。となっています。
メンバー登録された患者は、毎月定額料金を支払うことでサービスが利用可能となり、PACEの運営する施設の利用などができるようになります。この施設には、プライマリケアを行うクリニックや専門医、歯科医、薬剤師などの医療関係者が在籍するだけではなく、管理栄養士、訓練士、ソーシャル・ワーカーなども在籍する他、ゲームなどのレクを利用できるなど、様々なサポートを利用することができ、医療から介護まで一つの施設で完結するようになっています。
◆レスパイトケア
一時的に介護を代行してもらうことで、介護者が趣味や休息などの時間をもてるだけではなく、介護を受ける高齢者にとっても、家族以外の人と接することで認知機能の低下が抑えられる効果があると言われているレスパイトケア。日本でも利用の頻度が多くなってきているこのサービスは、介護負担の大きいアメリカでも当然注目されています。2000年にアメリカ高齢者法に追加された、在宅で高齢者を介護する家族(介護者)をサポートする「家族介護者支援プログラム」の一つとして、支援の対象をなっています。現在、半数以上の州がレスパイトケアプログラムを導入しています。「家族介護者支援プログラム」では、レスパイトケア以外に、介護者への情報提供や栄養管理指導、在宅サービスの紹介などのサポートが行われています。
家族への支援を手厚くすることで、介護者である家族が無理なく在宅ケアに取り組めるようになり、結果的に医療費を抑制することに繋がっています。
今回はアメリカの在宅医療についてご紹介をさせて頂きました。公的医療保険制度が充実していないアメリカでは家族介護者の負担が大きくなっていることがわかりました。だからこそ、介護負担軽減に対しての関心は高く、日本でも参考にできる点があるのではないかと思います。