ケアプラン自己負担導入を考える

ケアプラン自己負担導入を考える

ケアプラン自己負担導入を考える

今、2021年の制度改正で居宅介護支援の利用者負担の導入が争点となっています。ケアプラン作成に係る介護報酬は2018年時点で全体で10.7兆円。2025年問題とされる時期には15.3兆円。さらには2040年には25.8兆円に膨らむとされています。ケアプランの自己負担の導入は膨張する社会保障費の抑制を狙いとしたものではありますが、一方で財務省は、「自己負担がないことで、利用者側からケアマネージャーの業務の質についてチェックが働きにくい構造になっている」と問題を提起し、「利用者がより一層ケアマネの質のチェックを行っていくことに資する」とメリットを強調しています。これまでも様々なレベルで繰り返し検討されてきているケアマネジメントの自己負担の導入案。皆様はどのようなご意見をお持ちでしょうか。

反対派「いいなりプランを助長する」

10月18日、シルバー産業新聞にて独自で行ったアンケート結果が掲載されました。アンケートは現場で働くケアマネージャーを対象に行われ、その結果によると、83%のケアマネが有料化に反対と回答したという結果が出ています。反対の理由として一番多かったのが、有料化すると、利用者やご家族の要望に沿ったプランしか採用されなくなる、いわゆる「いいなりプラン」を助長してしまうという意見だったそうです。こういった意見の背景にあるのは、「有料化による『(利用者の)お客様意識』の高まり」や「料金が発生することで、利用者の要望に応じざるを得なくなる」、「利用者の要望を何でも取り入れてしまう事で自立支援とはならなくなる」など、有料化によって中立性が失われてしまう事で、適切なプランを作成できなくなることです。その他にも、利用者負担が増えることによって介護サービスを必要としている人がサービスを拒否してしまう可能性がある事、支払いの発生によってケアマネへの敷居が高まり利用控えが発生するなどの意見もあります。
有料化によるケアマネジメントの商品化によって、利用者の意識が変わり、結果として今までの水準のサービスを安定して提供できなくなることが多くの反対派のケアマネの意見の根底にありそうです。

「専門性のある視点での説得」もケアマネの役割

このような反対派のケアマネの意見がある一方で、学識者や費用負担賛成派は次のような理由をあげて導入に積極的な立場を明確にしています。

◆利用者や家族はケアマネジメント費用を誰が負担しているのか知らない。ケアマネジメントの質を担保する為にも利用者負担を導入すべき。
◆ケアプランの標準化を進め、公平・中立を確保するなど、よりケアマネジメントの質を上げる必要があるが、不十分なままである。これを打開するためにも自己負担を導入すべきである。「言う事を聞け」という利用者・家族の声を断れるケアマネが必要である。
◆利用者・家族が不当な要望をしてきた場合、弁護士のように、専門的な視点で説得するのがプロフェッショナルであるケアマネージャーには求められる。

また、先に挙げたアンケートの賛成派の声として、「有料化となれば、良いマネジメントをしているケアマネに人気が集まり、結果的に質の向上につながると思う」、「ケアプランの資質向上につながると思う。そこでは選ばれるケアマネとなる努力が問われることになる」など有料化により、利用者の意識が高まり、質の向上につながるという意見や、今後の介護保険制度の持続のためにやむを得ないとする意見もありました。

利用者の意識が変わることで、ケアマネの意識も良い方向へと変わり、結果として質の高いケアマネを育てることに繋がるというのが賛成派の意見のようです。

費用負担が利用者とのバランスを崩す

日本介護支援専門員協会の柴口里則会長は、自己負担導入に対し、徹底した反対姿勢を貫いています。その根拠は、「自立支援のケアマネジメントを阻害しかねない」ということを現場感覚で危惧している所にあるとして、以下のように続けています。アセスメントによりニーズを把握し、自立支援に結び付けるのがケアマネジメントだが、実際には「ヘルパーに来てもらいたい」「トイレには手すりをつけてほしい」など、初めからサービスありきの利用者・家族も決して少なくない。最前線のケアマネはそうした要望にしっかり耳を傾けながらも、場合によっては説明や相談を重ねてできる限り本人の自立支援につながるプランを提案している。非常に難しいバランスの中で、ケアマネージャーが利用者としっかり向き合い、実践していることだ。ここに利用者負担が発生し、「お金を払っているのに希望通りのプランにしてくれない」となれば、何とか保たれていたバランスがたちまち崩れかねない。その結果、いわゆる「いいなりプラン」が増え、介護保険が目指す自立支援とは全くの逆方向へ行ってしまうのではないかという懸念がある。
財務省は「負担がないことで利用者が質のチェックが働かない構造になっている」と主張するが、費用負担を求めれば、むしろ希望通りにしてくれるケアマネージャーが良いケアマネージャーと評価されてしまうおそれもある。こうした懸念が払しょくされない限り、利用者負担の導入は時期尚早である。

このように、現状賛否両論がはっきりと分かれています。財政面の問題を考えれば、介護保険制度の持続のために自己負担の導入は避けられない事なのかもしれません。しかしながら、ケアプランの有料化は利用者とケアマネの関係性に必ず変化を与えます。柴口会長が述べているようにケアプランが本来の目的からずれてしまえば、それもまた実質的な破綻を意味します。少なくとも、導入時期や細かな取り決めに関してはまだ議論が必要なのかもしれません。