ある担当者会議にて~たった一人と向き合う~

ある担当者会議にて~たった一人と向き合う~

ある担当者会議にて~たった一人と向き合う~

先日、当院の相談員が参加した担当者会議で、とても印象的なエピソードがあったので、ご紹介をさせて頂きます。

1/1か1/10000か

その担当者会議には、ご本人様、奥様、息子様、お孫様、ケアマネージャー様、ヘルパー様、当院の相談員が参加しました。会議は、今後のケアプランの計画と目標の確認、サービスの確認、各事業所からの報告とご家族への確認と通常通りの流れでご本人様、ご家族様のご理解も確認しながら行われていましたが、話題が福祉用具の話になると、ご本人様、ご家族様から不満の声が挙がったそうです。ご本人様は、家の中では5本支えの杖を使用して、移動をしていましたが、一緒に借りていた装具は全く使っていませんでした(代わりにサポーターを使用)。装具はシューホーン型の短下肢装具。使っていなかった理由は、「重すぎて疲れてしまう」「手が震えて、ベルト部分の装着がうまくできない」とご本人様が訴えていたそうです。更に、その後、息子様が次のように続けられたそうです。「この装具を決めるとき、担当者は『このタイプでいいから、これにしなさい。』、『つま先の所に滑り止めを付けた方がいいから付けましょう。』と全く親父の声を聞こうとせずどんどん決めていってしまった。はっきりと『万分の1』の扱いを受けたと感じた。こういったサービスは一人一人ときちんと向き合って提供されるべきだと思う。IさんとOさん(CMと相談員)は親父をきちんと見てくれているのが伝わってくる。この装具が使えるものか使えないものかは問題ではない」。
きっと福祉用具のご担当者は、ご本人様を「万分の1」として扱おうと思ったわけではないと思います。その方なりに、ご本人様の事を考えてその装具を選ばれたのでしょう。ですが、結果としてその装具はご本人様には合わず、不信感を生んでしまいました。私はこのエピソードから「経験則の落とし穴」を感じました。きっとこのご担当者様は、ご自身の経験から「これが一番いい」と思われたのでしょう。恐らくは、ほとんどの方は実際にそれで良いのだと思います。ですが、そこに慢心が生まれてしまった。目の前の利用者様の声に耳を傾けられなかった部分があったのではないでしょうか。目の前の一人一人に向き合う事の大切さを再認識させられる貴重なご意見だと感じました。

知る事は聞く事から始まる

この後、担当者会議の終わりがけにケアマネージャー様から、ご本人様に「生まれてから今までのお話を聞かせて下さい」という質問があったそうです。どこで生まれて、なんという小学校に行っていたのか、どこの中学校に行って、お仕事は何をされていたのか、奥様とはどのように出会ったのかなど本当に楽しそうにお話をされたそうです。そのお話の中には、ご本人様の嗜好などはもちろん、ご家族間の関係性、ご家族も知らなかったお話などもあり、私たちがご本人様の事を知れただけではなく、ご家族が改めてご本人様の事を知れるような貴重な時間だったと相談員は話していました。
こういった情報は、サービスに生きてくるだけではなくご本人様との信頼関係を構築する上でも非常に重要になってきますが、時にはご家族が知らなかったご本人様のお話を聞ける場合もありますね。
どう聞けば、ご本人様が話をしやすいのか、どういった雰囲気で話をするのが好きなのかなど、その方の事を知る為にはどう聞くのかを考えることが大切だと感じました。

本日は担当者会議のエピソードをご紹介しました。改めて、一人一人に向き合う事の大切さ、向き合う為に聞く事の大切さを再認識しました。さらに、「傾聴すること」を大前提として、注意しなければならないのは、「要するに~でしょ」というまとめ方、つまり、相手の話を「自分のメンタルモデル」に当てはめて理解するという聞き方です。誤解を恐れずいえば、これは経験則での枠組みを累積的に補強するだけの効果しかありません。

本当に「より添うケア」を日々実践していくためには、言葉の微妙なニュアンスを汲みとり、真贋を見ぬく能力に磨きをかけていく必要があると思います。そのために、安易に「わかった」と思うこと、「パターン認識」の陥穽に陥らぬよう、一層の注意が必要ではないでしょうか。(聞き方の深さについては、MITのC・オットー・シャーマーが提唱した「U理論」が大変勉強になります)。

皆様も勉強になった、また、印象に残ったエピソード等があれば、是非、共有いただければ幸いです。