徘徊?暴言・暴力?認知症の周辺症状について

徘徊?暴言・暴力?認知症の周辺症状について

徘徊?暴言・暴力?認知症の周辺症状について

認知症の症状には、記憶障害や判断力の低下といった中核症状、徘徊や暴言暴力といった周辺症状とよばれるものがあります。今回は周辺症状についてお話します。

認知症の症状とは?

認知症は、加齢に伴い脳の神経細胞が壊れることによって、様々な症状が出現しますが、大きく中核症状と周辺症状(BPSD)に分けることができます。初期には「記憶障害」「判断力の障害」「失語」など認知症の方に共通する中核症状が現れます。その一方で、周辺症状は個人差がありますが、身体的・精神的なストレスなどが原因で出現します。

周辺症状ってなに?

認知症になると、物忘れなど様々な症状が現れます。しかし、症状が深刻になってくると、暴力や暴言、幻覚、妄想、せん妄、失禁など介護者が対応に苦労する周辺症状(BPSD)が目立つようになります。認知症の方のケア・介護において、介護者がもっとも心身ともに疲弊するのが、この周辺症状(BPSD)によるものだと言われています。
BPSDとは、(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)とも呼ばれています。認知症の方に見られる中核症状にともなって起こる行動症状・心理症状のことを指します。

周辺症状の種類にはどういうのがあるの?

徘徊

不安や焦燥、見当識障害により歩き回る症状です。「夕暮れ症候群」とも言われ、夕方から夜間にかけて多くなる傾向があります。行方不明や交通事故などの被害も多く、周辺症状の中でも特に注意が必要です。
対策としては、エリア外に出るとアラームで知らせてくれる「徘徊センサー」を本人に持たせたり、「認知症サポーター」を中心とした、地域でのネットワークの充実などが挙げられます。特にアルツハイマー型認知症に多く見られるような「家に帰る」、「会社で仕事をする」という「徘徊」は、本質的には家庭内での役割喪失を憂う感情から、かつて自分が輝いていた時代に戻りたいという情動の表れです。
患者さんが家庭内で役目を持っている、自分は必要とされているんだと自覚できるよう、患者さんが失敗しない程度の家庭内での役割を担って頂くのが、「徘徊」を予防する最も有効な手立てでしょう。

多動

前頭側頭型認知症(40~64歳発症の初老期認知症には比較的多い。以前ピック病と呼ばれていた認知症ともほぼ重なります)のBPSDの特徴として見られるのが「多動」で、落ち着きなく同じコースを歩き回る「周徊」や時刻表のように同じ行動を決まった時間に繰り返す「時刻表的生活」などが見られます。このように同じ行動を常に繰り返すことを「常同行動」と言います。
対処法としては、介護を常同行動のルーティンの中に取り込む(9時、12時、19時に食事をとり、15時になったらオムツを替える、など)ことが考えられます。

不潔行為

排泄物を手でもてあそぶ弄便や、尿を撒き散らしたりという不潔行為は、見当識障害や実行機能障害によって起こります。残便による不快感を解消するために便を手で出そうとしたり、排泄物という認識がないためオムツに違和感を覚えたり、排尿障害や歩行障害によってトイレまで間に合わず漏らしてしまうこともあります。
決まった時間にトイレに行くようにしたり、オムツをこまめにチェックしたりして、認知症の方が便をいじらないようにしましょう。また、爪を切りそろえ、手洗いを徹底し、清潔な状態を保つようにすることも必要です。またポータブルトイレの設置なども有効です。

不安・焦燥

認知症の方は一般に病識(自分が病気であるという認識)には欠けますが、漠然と分からないこと、できないことが増えていき、自分が壊れていくようだという病感は保たれているため言いようのないストレスを感じ、「不安・焦燥」状態になりやすいです。一人になるのを極端に恐れたり、焦燥から不平や不満を大声で叫んだりするのが特徴です。
命令口調や威圧的な態度で接したり、不用意な身体接触をすると、その不安や焦燥をさらに増加させてしまう可能性があるので、「共感」を軸にしたコミュニケーションを心がけましょう。

アパシー

アパシーとは自発性や意欲が著しく低下し、家に閉じこもりがちになることを指し、無気力で何をする気にもならない状態が続きます。うつ病と混同されがちですが、アパシーは特に意欲の低下が顕著に現れます。
アパシーの対処法としては、できるだけ規則正しい生活をおくること、定期的な外出などを心がけることで、少しずつ意欲を促進し、症状の緩和を試みるといいでしょう。また、認知症治療薬の投薬が効果を認められています。ただし、認知症治療薬は副作用を起こす恐れもあり、十分な効果を得られるとも言い切れません。処方を希望する場合は医師とよく相談してから決めましょう。また介護者も疲れやストレス、もしくは家族を失った喪失感などからアパシーになってしまうこともあります。

うつ

脳萎縮や血管障害によって気分の抑うつや慢性頭痛、不眠などうつ症状が出現するケースもよく見られ、アルツハイマー型認知症の初期には約20~40%の方に見られると言われています。認知症初期は病識があるため、記憶力の低下などに喪失感を抱き、悲観的になってしまうのです。
家族がうつ状態にあると気づいたら、運動や会話などを通して少しでもリフレッシュできるよう気を配るようにしましょう。無気力になったり、記憶力の低下、判断力の喪失など認知症とうつ病は似ているため、混同されやすくなっています。医師の判断をあおぐようにしましょう。こちらもアパシー同様に、介護者もかかりやすい病気になります。

無為・無反応

レビー小体型認知症では意識障害によって覚醒レベルが低下し、反応が鈍くなることが起こります。前述した、アパシーやうつによっても無為・無反応が起こる可能性もあり、何事にも関心を持たなくなってしまいます。
スキンシップや音楽療法などによって五感を刺激することが効果的だと言われていますが、あくまで患者さんの快い、楽しいという感覚を呼び起こすことが重要で、やみくもにおこなっても効果はありません。音楽療法や絵画療法などは一見誰にもできそうではありますが、しっかりとした専門的技術が必要です。「無為・無反応」単独の対応は難しいですが、「ユマニチュード」など認知症の方との接し方を変えていくと反応にも変化が生まれることが期待できます。

幻覚・妄想・錯覚

幻覚は、ないものが見える幻視と、ない声・音が聞こえる幻聴があります。特にレビー小体型認知症の方の8割は幻覚がみられます。また、アルツハイマー型認知症では妄想も多く、「物盗られ妄想」などで、家族や介護職員の心が深く傷つくケースもあります。
「幻覚・妄想」への対処法としては、相手の言うことを否定しないコミュニケーションがもっとも重要になります。どんなに信じられないようなことを言っても、本人は実際に感じていることですので、まずは否定せずに落ち着かせるようにしましょう。また認知症の方が興奮したり暴れてしまうと、転倒や怪我につながります。周りに刃物などは置かないようにしましょう。できるだけ本人の話を聞き、その”恐怖のもと”を絶ってあげることが大切です。

暴言・暴力

認知症によって前頭葉の機能が低下し、感情のコントロールが難しくなった場合、家族や介護職員に暴言や暴力を振るうことがあります。実際、介護職員の9割以上が暴言・暴力の被害に遭っていると言われています。レビー小体型認知症による睡眠障害(レム睡眠行動異常)、脳血管性認知症によるせん妄が原因である場合、夜間であっても大声を挙げたり家族、介護職員と物理的に衝突するケースがあり、家族の疲弊につながります。「暴言・暴力」の原因は、「不安や混乱を感じている」「感情のコントロールがうまくいかない」「自尊心が傷つけられたと感じている」などが考えられます。
対処法としては、認知症の方とのコミュニケーションの取り方を考えましょう。警戒心を抱かせないよう、感情的な言い方を控えて、あくまで理性的な話し方をしたり、どうしても耐えるのが難しければ距離を取りましょう。また薬剤による治療が有効な場合もあります。医師に相談してみましょう。

まとめ

認知症の周辺症状(BPSD)のなかでも徘徊や暴言・暴力などは家族の負担も重く、介護をする側は大きなストレスを受けます。しかし、認知症の進行に伴って変化することもあり、家族の適切な対応がそのカギとなります。正しい理解に基づく、正しい対応を心がけましょう。また、介護に疲れてしまい休息をとりたいときは、レスパイト入院といった形もありますのでご相談ください。