在宅医療の基礎知識 酸素療法について

在宅医療の基礎知識 酸素療法について

在宅医療の基礎知識 酸素療法について

在宅酸素療法(HOT)とは

酸素療法とは、室内空気より高い濃度の酸素を投与することで、自宅で実施することを在宅酸素療法Home Oxygen Therapy(HOTホット)といいます。慢性呼吸不全や慢性心不全などの患者さんで、体の中(厳密に言うと動脈の血液中)の酸素濃度がある一定のレベル以下に低下している患者さんに対して酸素を吸入で投与する治療法です。

在宅酸素療法が必要になるケース

在宅酸素療法はどのような方に必要になるのでしょう。一言でいうと、“からだの酸素が足りていない方”が在宅酸素療法の対象の方となります。COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核後遺症、関節性肺炎、肺がんなどによって、低酸素血症になり、「呼吸不全」と呼ばれる障害を引き起こします(動脈血の酸素分圧が60mmHg以下、または酸素飽和度が90%以下)。このような状態が1か月以上続く場合は「慢性呼吸不全」と呼ばれ、病院だけではなく、自宅でも酸素吸入の必要があると診断された場合、在宅酸素療法が必要な状態となります。

対象となりやすい疾患例

・高度慢性呼吸不全
・肺高血圧症
・慢性心不全
・チアノーゼ型先天性心疾患

在宅酸素療法に期待できる効果

まず大前提として、肺、心臓、肝臓、腎臓など、体の中の臓器が働くためにはエネルギーが必要です。酸素はあらゆる臓器の働きを守っています。では、在宅酸素療法によって、酸素不足を改善することでどのような効果が期待できるのでしょうか。

・息切れの改善
・入院回数の低減
・長く歩くなどの運動能力の改善
・記憶力・注意力低下の改善
・生きがいのある生活を送ることができる
・心臓への負担を軽減

以上のような効果が期待できます。他にも、肺以外の臓器にかかる負担を軽減することにより、高血圧や心不全、脳卒中、狭心症、急性心筋梗塞などの合併症予防にも期待ができます。 ちなみに、酸素を使いすぎると酸素吸入に依存した体質、肺機能を弱めることにつながるなどの誤解を持たれている方もいらっしゃいますが、そういった副作用的な効果はありません。

在宅酸素療法導入の流れと費用負担

在宅酸素療法は医師により処方されます。基準を満たすと健康保険で在宅酸素療法を受けることができます。

保険適用基準

・慢性的にPaO2が低く、その値が55torr以下の方。
・慢性的にPaO2が低く、60torr以下であり、歩いたり、睡眠中に呼吸が浅くなった時にさらにPaO2が大きく低下する方。

導入までの流れ

1.まずは機器を医療機関からレンタルします。健康保険の適応上、ひと月に1度以上受診をする必要があります。

2.機器の設置、操作の説明、機器の緊急対応、定期メンテナンスは機器の取扱会社が行います。こういった対応への自己負担の費用は発生しません。

3.自宅では酸素供給装置からチューブを通して酸素を吸入します。チューブの先は鼻の下で固定するような鼻カニューレを用いることが多いです。外出の際は、軽量の酸素ボンベを用います。酸素を吸入する量や時間は、主治医と相談して決めます。

費用負担

1.酸素濃縮器だけ使用する場合(1か月)
1割負担:¥6,500 2割負担:¥13,000 3割負担:¥19,500

2.酸素濃縮器、携帯用酸素ボンベを使用する場合(1か月)
1割負担:¥7,680 2割負担:¥15,360 3割負担:¥23,040

機器の電気代

機器の使用料以外にも、毎月の電気代がかかり、使用量の目安の金額は以下の通りです。
・酸素使用量2L:約¥1,500
・酸素使用量3L:約¥1,600~3,600
・酸素使用量5L:約¥3,000~4,500
・酸素使用量7L:約¥4,500~8,500
※上記金額はあくまでも目安です。実際の電気代はご利用の状況によって異なります。

まとめ

今回は在宅酸素療法(HOT)の基礎知識についてご紹介を致しました。
現在日本では約17万人の方がこの療法を行っており、家族と一緒に自宅で療養したい、自分らしい生活を取り戻したいといった方々の強い味方となっています。
経済的な負担から導入が難しい方も多くみえられますが、身体障碍者の認定など、負担軽減に使える社会資源もございます。
将来必要になりそうな方、無理をして使わずに頑張っている方などが周りにいらっしゃいましたら、この機会にもう一度ご検討をされてみてはいかがでしょうか。