潤滑油とブレーキのコミュニケーション技術とは

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潤滑油とブレーキのコミュニケーション技術とは

コミュニケーション能力が高い=話し上手と考えがちですが、人との意思疎通で話し方と同様に大切なのは、相手の話を注意深くきく「傾聴」というスキルです。日本では、「社会福祉援助技術」や「相談援助」と同じ意味として捉えられることもあるソーシャルワークですが、「傾聴」がとても大事になります。今回は、この「傾聴」に関してお話しさせて頂きます。

「傾聴」ってどういったもの?

傾聴とは、相手の話に耳を傾け、熱心にきくスキルのことです。もともと心理学のカウンセリングなどに用いられるテクニックです。相手が本当に話したいことを引き出して理解することを目的に用いられています。

英語では「Active Listening(アクティブ・リスニング)」と表されるように、傾聴はただ聞き手に徹するだけではありません。言葉の意味を理解するだけでなく、表情や声のトーンなどまで注意を払い、相手の気持ちに寄り添いながらきく。それが「傾聴」というスキルなのです。せっかく話していても、相手が真剣にきいている姿勢がないと、話す気がなくなってしまいますよね? 相手の言いたいこと、伝えたいことをより深く引き出し、円滑なコミュニケーションをとるためには必須と言えるでしょう。

ソーシャルワークにおける「傾聴」とは

F.P.バイスティックは、「ケースワークの原則-援助関係を形成する技法」において、ケースワーカーの役割の中で、クライエントの話を聴く能力とクライエントを観る能力について次のように述べています。
「クライエントが彼の経歴や感情を彼なりの方法で話すことができるようになれば、ケースワーカーはクライエントについていっそう多くのことを理解することができるようになる。そして、ワーカーはクライエントを、さまざまな家族との関係や地域とのつながりのなかで生きている人として捉えることができるようになる。また、ワーカーは、クライエントをとり巻く社会的状況を観察できるようになり、さらにクライエントを社会的状況との関連の中で、クライエントの感情や問題を理解することも可能になってゆく。」

このように、クライエントの話を聴く能力、すなわち傾聴する力は、対人援助関係を形成するうえで基本的かつ重要な位置付けにあるのです。

「傾聴」スキルを身に着けるトレーニング方法

では、傾聴力はどう身につければいいのでしょうか? はじめから自然に傾聴することは難しいのですが、日々の意識やトレーニング次第で高めることができます。ここでは傾聴スキルを身に付けるためのトレーニング方法を紹介します。

1. まずは態度と姿勢を変えてみる

傾聴するうえで非常に重要なのが、“態”と“しぐさ”。相手の話に興味があり、しっかり聴く意思があることを自分の身をもって示す必要があります。
傾聴する際の態度は、相手のほうに体を向け、顔や目を見るようにしましょう。姿勢は前のめり気味にします。仲の良い友人と夢中になって話しているときに自然とそうなることはありませんか? 話の内容にもよりますが、相手にリラックスしてもらえるよう柔らかい表情を心がけるとよいでしょう。
また、しぐさにも要注意です。たとえば、腕組みは警戒や拒絶を表すため、相手との間に壁をつくってしまう恐れがあります。当然、時計やスマートフォンを気にしたり、視線をあちこちに向けたりしないように注意が必要です。
ただし、無理に傾聴の姿勢を作ろうとすると、かえって相手が緊張してしまう可能性もあります。まずは自分がリラックスし、ゆったりと相手を受け入れるような気持ちでのぞむといいでしょう。あくまで不自然さを感じさせないのがポイントです。

2. ミラーリングやバックトラッキングを使いこなす

傾聴には「ミラーリング」や「バックトラッキング」など、いくつかのテクニックがあります。突然、専門的な用語が出しましたが、難しいテクニックではありません。
「ミラーリング」は、鏡のように相手と同じ動きをすることです。姿勢や表情、しぐさ、声のトーンなどを相手と同調することで、親密感や安心感を感じさせることができます。わざとらしくならないように、タイミングをはかったり真似するポーズを左右反対にしたりするのがうまくミラーリングするコツです。
「バックトラッキング」とは、「オウム返し」のことです。相手が話したことを繰り返すことで、しっかり理解してくれているという印象を与え、共感を示すことができます。相手の感情に寄り添いつつ、一部を抜粋するように返すといいでしょう。ただし、タイミングや頻度を間違っていると、逆効果にもなります。すべてに「バックトラッキング」していると、相手から文字通りに「オウム返し」しかしない人と思われ、真剣に話をしてくれなくなってしまいます。
ほかに、適度に相槌を打ったり、話を途中で遮らず話すペースを相手に合わせたり、といった基本的なテクニックも欠かせません。やりすぎは禁物ですが、自然にできるようになると傾聴のレベルがぐっと上がるはずですよ。

3. 相手の話を言い換えてみる

傾聴では、話の内容を適宜まとめながら聴くことがとても大切です。こちらは、「パラフレーズ」とも呼ばれる手法。ある程度話を聴いたら、その内容を自分の言葉に言い換えみましょう。たとえば、「◯◯ができなくて困っている」という話を「◯◯ができたら解決する」というように転換します。またことわざなどで表現するのもオススメです。認識をすり合わせたり、きちんと話の内容を理解していることをしめせます。
相手は「共感してくれている」と安心するだけでなく、自身で話した内容が他人の言葉に言い換えられることで、その内容を客観視できるようになります。すると、新たな気づきが生まれ、より相手の真意や素直な感情を引き出せるようになるというメリットもあるのです。

まとめ

皆さんは多くの方と接する中で「傾聴」はどこまで心掛けていますか?自分にやりやすいように話を持っていくと傾聴しきれないことも出てくるかと思います。利用者本人やそのご家族の気持ちに沿った提案を行うために一度「傾聴」について振り返ってみるのもよいのではないでしょうか。